家賃は経費になるんですか?

フリーランスとして自宅で働いています。ネットで調べると家賃も経費になるって出てたんですが、本当に経費になるんですか?ちなみに、自宅の賃貸借契約を結んでいるのはパートナー(配偶者)です。

ポイント:自分で払ってない家賃が経費になるわけないでしょ。

自宅家賃を経費にするポイントは次の3点です。

  • 自分が契約者となっている。
  • 事業のお金で家賃を払っている。
  • 事業で使っている部分を他人に説明できる。

バナナはおやつに含まれますか?

それなりの資格を持ちながらコワーキングスペースを経営していると、結構な頻度で「〇〇って経費になりますか?」って聞かれます。そのたびに、なんとなく懐かしい感じがしていたのですが、この記事を書き始めて気づきました。

バナナはおやつに含まれますか?

って聞かれているのと同じだったんです。

あらいさんと同年代だったら、「バナナはおやつに含まれますか?」の意味は分かりますよね。わからない人のために一応説明しておくと、遠足のおやつは300円分までとなっているけれど、果たしてバナナはおやつなのか、それともお弁当のデザートなのか。先生が「おやつ」と決めてしまったらさぁ大変。おやつ代が少し削れてしまいます。ここはなんとか説得して、先生に「バナナはデザート」と判断してもらわなくては……。というやつですね。

今だと、「タピオカはおやつですか?飲み物ですか?」という感じでしょうか。

バナナでもタピオカでも、何も説明しなければ先生は「おやつ」と判断してしまいます。でも、「バナナはデザート!」「タピオカは飲み物!」と何かしらの根拠を持って説明できれば、先生は「デザート」と納得してくれるでしょう。

家賃も同じです。万が一税務署(先生)が来たときに、根拠を持って説明できれば経費になる(と思います)し、なんの根拠もなく経費と主張しても一蹴されて終わりでしょう。

法律の文章を見てみよう

だいぶバナナとタピオカの話で時間を潰してしまいました。今回は、多分誰も法律の文言をきちんとチェックしていないと思うので、法律を引用しながら「経費とはなんぞや?」と考えてみましょう。法律に興味のない人は、この節は読み飛ばしてください。

必要経費とは?

ここまで「経費」という言葉を使ってきましたが、法律上は「必要経費」が正式名称となります。必要経費については次のように法律で定められています。

その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

所得税法 第37条1項:文字サイズの調整および太字、文字色は筆者による。

ざっくりと言うと、次の4つが必要経費となります。

  • 売上原価
  • 販売費
  • 一般管理費
  • その他の費用

売上原価は販売する商品を仕入れた(購入した)ときの代金ですね。服屋さんだったら売るための服を買ってきた値段、パン屋さんだったらパンを作るための小麦とかが売上原価です。

販売費は商品を売るためにかかる費用です。分かりやすいものだと広告宣伝費ですね。チラシを刷ったり、ウェブ広告を打ったりしたら販売費です。

一般管理費ってなんでしょうか?ビジネス全体を管理運営していくためのコストですね。たとえば、会計ソフトを買ったり、月額利用料を払って使用している場合なんかは、その支出は一般管理費になります。

その他の費用とは、ビジネスのために借入をしているときの支払利息とか、その他ビジネスに関係のある費用です。

あまり難しいことは考えず、まずはビジネスに関係のある支出は必要経費なんだ!と理解しつつ、皆を悩ませる「家事関連費」に進みましょう。

家事関連費

スモールビジネスで最も悩みが多いのはここではないでしょうか?
冒頭のバナナとタピオカ……ではなくて、「家賃は経費になりますか?」と言う質問が出る原因は、家事関連費にあります。さっそく法律を見てみましょう。

居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの

所得税法 第45条1項、同1号
  • 家事上の経費
  • 家事に関連する経費

は必要経費に参入しないのです。
ざっくり言えば、「プライベートな支出とか〜、プライベートっぽい支出は事業の経費にしないでね♪」という感じです。
せっかくなので、政令も見てみましょう。政令も見て内容を理解できれば、必要経費偏差値は60超えだと思います!

法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
二 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費

所得税法施行令 第96条

ちょっと読みにくいですね。

所得税法で、「家事関連費は必要経費にならないんだから!」とツン宣言しつつ、施行令では「でっ、でもちゃんと事業に使ってて区分が明らかなら経費にさせてあげるからねっ!!」とデレた感じですね。ツンデレちゃんです。

青色申告と白色申告がわかることを前提に話しますね。

施行令の1号(漢数字の一)の文言は、青色・白色共通なんです。ポイントは家事関連費の主たる部分が事業をするために必要だという点です。2号(漢数字の二)の方を見ると、「青色申告」という文言が増えて、「主たる部分が」という文言は消えています。

つまり、家賃を経費にしようと思ったら、

  • 青色申告の人 → 事業に関連 + 区分が明確 → 必要経費
  • 白色申告の人 → 家賃の主たる部分が事業に関連 + 区分が明確 → 必要経費

というように、白色申告の人は家賃のほとんど、つまり借りている家のほとんどを、事業用に使っているということを説明しないといけません。これって結構厳しいです。マンションの部屋を借りる際、単に居住用として使うのであれば消費税はかかりませんが、事業用だと消費税がかかります。ですので、賃貸借契約書で消費税がかかることが明示されていないと、白色申告の人が家賃を必要経費にするのは難しいと思います。
(居住用物件の場合、貸付期間が1ヶ月に満たない場合などを除き消費税は非課税となります。)

……とここまでは法令の話です。さらにややこしいのは、法令に加え、税金には国税庁とか税務署の指針として「基本通達」というものがあります。所得税の場合には「所得税基本通達」が該当します。

この基本通達は、本来国税庁や税務署職員の人が判断を統一するために用いるものです。納税者側からすると従う義務はありません。一方で、法令で明示されていない数値基準を示しているものもあり、多くの場合通達に従って処理を行うことが通例となっています。

今回の家事関連費について、「所得税基本通達」では白色申告の人でも、青色申告の人と同様に「主たる部分」の要件を満たさなくても必要な部分を明らかに区分できれば必要経費として認める扱いとなっています。

もはやこうなってしまうと「主たる部分が事業に関連」という言葉に意味はないように思えてきます。ちなみに、所得税基本通達では、「主たる部分」の意味は支出した経費の「50%超」という数値基準も示されています。

家族に対する支払い

ここまでで頭はパンパンでしょうか。

最後に忘れてはならない法律を紹介しておきます。家族に対する支払いについて書かれた条文です。

居住者と生計を一にする配偶者その他の親族その居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとしかつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。

所得税法 第56条(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)

細かい点で正確ではないことを承知でわかりやすく伝えると、パートナーへの支払は必要経費になりません、と書いてあります。正確に理解したい方は条文の文字を小さくしたところを読んでみてください。なお、読んでも時間がかかる上に誤解すると思うので読まないことをオススメします。

今回のご相談のように、パートナーが契約している部屋の一部を事業用として使っているケースでは、事業関連性があり、区分も明確にできるけれど、パートナーが支払っている家賃は必要経費になりません。また、家賃相当額をパートナーに支払っても必要経費になりません。

どうしても家賃を経費にしたいのであれば、まずは契約者を自分に変える必要があります。そして、いざ契約者を変えようとしても、フリーランスだと保証会社の審査が下りないとかあるので、なかなか厳しいものがあります。

バナナはおやつか?お弁当のデザートか?

さて、今回はバナナとタピオカを題材にしながら、家賃は経費になるのか?ということを学んできました。書き終わってから気付いたのですが、法律に関する部分がだいぶアツくなっていました。反省はしていません。

学んだことは次の3つです。

  • 家賃を経費にするためには、自分が賃貸借契約の当事者となって、自分のお金で家賃を払う必要がある。パートナーが契約の当事者である場合、パートナーに対して家賃相当分を払っても経費にはならない。
  • 家賃全体のうち何%を経費にするか決まりはないが、何%であってもきちんと根拠をもって計算することが大事。事業のために使っている面積とか、時間とかをもとに計算するべき。
  • 白色申告だと家事関連費の主たる部分が事業に関連していないといけない。青色申告よりも要件が厳しいことに注意する。

勘違いして家賃を経費にしている人もまだ間に合います!(現在2020/01/28)
「よーわからんけど、家賃経費になるみたいだからパートナーが払ってる家賃経費に入れとこ♪」みたいな人はさっそく仕訳を見直しましょう。

今回の一番の収穫は、青色と白色のニッチな違いを知れて、誰かに聞かれたときに鼻高々で話すネタができた、というところでしょうかね。

ところで、今までパートナーが払っていた家賃をしれっと経費計上していた人たちって、どんな仕訳を切ってたんでしょうかね?

【借方】支払家賃 30,000 /【貸方】現金 30,000 ???

現金はどこへ消えた???

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